日本で企業を設立する際には、様々な法的形態が存在します。その中でも、株式会社と合同会社は代表的な法人形態のふたつであり、それぞれ独自の特徴やメリット・デメリットを持っています。今回は、これらの法人形態に焦点を当て、それぞれの特性や法的な側面から比較を行い、起業家や事業者がどちらを選択すべきかを考えてみましょう。

項目株式会社合同会社
所有と経営分離一致
設立費用約22万円約10万円
配当出資割合に応じる制約なし
役員任期原則2年なし
株式上場×
定款認証必要不要
決算公告必要不要
意思決定株主総会全社員の同意

株式会社と合同会社の基本概要

株式会社と合同会社で大きく違うのは、所有と経営の分離の可否です。株式会社は出資者と経営者が異なってもOKですが、合同会社は出資者が経営者になります。実際は株式会社でも出資者が経営者を担っていることが多いと考えられますが、所有と経営の分離が可能かどうか、というところは、企業が成長するにしたがって大きな影響を与えてきます。

株式会社と合同会社の比較

設立費用の面での比較

設立費用は合同会社の方が安価です。合同会社では登録免許税が株式会社よりも安く、さらに定款の認証費用がかからないためです。

項目株式会社合同会社
定款収入印紙 ※14万円4万円
登録免許税 ※215万円から6万円から
定款認証費用3万円~5万円不要

※1 定款収入印紙は電子定款の場合は不要です
※2 資本金により変動します。いずれも資本金の額×0.7%が最低金額を上回った場合、その金額を納税します

株式会社は設立時に会社の基本的なルールを定めた定款を作成し、第三者に認証してもらう必要がありますが、合同会社は出資者と経営者が同一なため、第三者に認証してもらう必要がないのです。

コストの観点で付け加えると、合同会社は決算公告義務がありません。

税務上の違いと影響

税務面での違いは特にありません。

配当における違い

株式会社は原則として出資比率に応じて配当の金額が決まります(種類株式を除く)。一方で、合同会社では配当の配分比率は定款によって自由に決める事ができます。

代表者における違い

株式会社では法人は取締役になれませんが、合同会社では法人が代表社員(株式会社で言う代表取締役)になれます。ただし、代表社員が法人の場合は、実際に職務を執行する職務執行者の選任が必要です。

株式会社では役員は原則として2年ごとに更新が必要ですが、合同会社の場合更新は不要です。

資本の調達と事業拡大の視点

合同会社では株を発行できないので出資による資金調達ができません。

合同会社の使い方

合同会社はどのような時に適しているのでしょう。

合同会社の適切な使い方とは、本体が別にあって、日本での法人のハコとして使いたい場合であると考えます。例えば、外資系企業の日本法人などです。実際に、GoogleやAmazonの日本法人は合同会社です。米国本社の意思決定に基づいて代理店的な動きをする日本法人は、株式会社のような拡大可能性は必要なく、法人としての機能だけを保有できる合同会社が良いのです。

一方で、いわゆる一般的な起業の場合に合同会社を選択するメリットは設立費用が安い、ということぐらいでしょう。長期的に事業を継続していく場合に、合同会社はデメリットが大きすぎます。

合同会社から株式会社への変更は可能か?

可能かどうかで言えば、出資者全員の同意があれば可能です。しかし、事務的な煩雑さが伴います。契約の全ての名義変更が必要である可能性や、あるいは取引先によっては再契約が必要な場合もあるでしょう。登記申請には費用もかかります。