ダイニーCEO山田さんのnote投稿が大きな反響を呼んでいます。

「1塁打」を狙う日本のVCに、存在価値はあるのだろうか?
https://note.com/maochil/n/nd25fab444e70?sub_rt=share_pb

端的に記事を要約すれば、日本のVCが小さくまとまっていることへの叱咤激励的なメッセージです。

ダイニーは海外VCを中心に巨額の資金調達を実施

ダイニーは今回のシリーズB調達ラウンドで74.6憶円という巨額の資金調達を成功させました。リード投資家はシリコンバレーの老舗VCであるBessemer Venture PartnersとHillhouse Investment Managementの2社で、日本への初投資だそうです。日本のVCだけではこの金額の調達は難しかったでしょう。

山田さんは起業から今まで資金調達を続け、多くのキャピタリストと話す中で日本のVCに対して思ったことの蓄積がこのnoteに込められているのだと思います。このタイミングでの発信は、日本のスタートアップエコシステムへのメッセージ性はとても強く、決して批判ではなく叱咤激励的な意味合いが強いものと感じました。

日本のスタートアップ投資が少ないのは事実

私も大学院でスタートアップエコシステムの研究をしている過程で、この問題意識は非常に強く感じていました。この30年で日本企業の国際的プレゼンスは大きく低下しており、日本から世界を席巻するスタートアップが生まれなかったことがその一つの要因であることは明白です。

日本からGAFAのようなスタートアップが生まれなかったことが、日本のVCだけの責任とは全く思いません。ただ、ベンチャー投資額が他国と比較して圧倒的に少なかったことは事実としてありますし、そのようなリスクテイクができなかったことは、スタートアップ成長の阻害要因の一つになったということは言えると思います。

日本人はリスクを嫌う

研究をしている中で思ったのは、日本人というのはリスクを極端に嫌う人種であるということです。

まず、失敗を認めない文化があり、開業率が低い傾向にあります。リスクを取れない国民性は、金融資産の現預金率にも明白に表れており、米国の現預金率が10%程度であるのに対し、日本は50%超となっています(2019年時点)。優秀な新卒は大企業へ行くのが当たり前だし、親も喜びます。前例踏襲が奨励され、新しいことをやろうとしても決裁が通りません。

このような状況で、日本スタートアップエコシステムの問題がVCだけの責任とは決して言いきれません。個人的には日本の教育から変えていかなければこの国民性は変化していかないのではないかと思います。

国民性を乗り越えて大きなホームランを

ただ、スタートアップ投資とは、山田さんも書いているように、100社のうち1社がホームランで、残りの99社の失敗を補って余りあるリターンを叩き出すものです。失敗を恐れるのであれば、スタートアップ投資はできません。つまり、日本のVCにはこのような国民性を乗り越えて、大きなホームランを生み出してほしいというのが、個人的な想いとしてあります。

ここ最近、a16zの日本進出など、海外VCが日本のスタートアップマーケットに参入してきています。ダイニーの事例も、その具体的な始まりを示しています。

日本のスタートアップエコシステムに海外VCが入り込むことによって、スタートアップ成長環境により良い影響が生まれ、世界に羽ばたく日本のスタートアップが数多く輩出されることを願っています。

参考:ダイニー、74.6億円のシリーズBラウンド資金調達を実施