法人税の税務調査というカテゴリーだけでも様々な種類があります。税務署側から「今回の調査はこういう種類の調査で、こういう目的で行われます」とは具体的に教えてくれません。しかし、訪問してくる調査官の人数や経験年数、所属部門からある程度推測することができます。
調査官が一人のケース
調査官が一人の場合は一般的な調査であることが多いです。一般的とは、長期で調査してなかったり、少し気になる資料(タレコミ)があるくらいで、特別な目的を持っていない調査という事です。調査官は若手の事務官から、ベテランの上席までいろいろなパターンがあります。見習いである事務官が一人で来ることは稀ですが、最近の税務署は教育係不足なので、右も左もわからない1年生が一人で調査ということも珍しくないようです。
調査官が二人のケース
調査官が二人のケースは様々なパターンがあります。組み合わせごとに説明していきます。
このケースは大きく3パターン考えられます。
一般部門調査
1つ目は一般調査で、若手調査官の指導担当としてベテラン1人ついてくるケースです。ベテラン調査官の方は同じ部門の上席、統括官、または署の指導担当調査官(定年後の再任用職員の可能性あり)などが考えられます。この場合、一般調査なので安心してください。
特官部門調査
2つ目は特官部門の調査です。これは名刺を見ればわかります。ベテランの方の名刺の肩書が「特別調査官」となっていれば、特官の調査です。税理士が付いている方なら、職員データベースで調べれば調査当日より前にわかります。特官調査は税務署管轄の法人で比較的規模が大きな法人に対して行われるものです。したがって、一般調査とそれほど扱いは変わりません。しかしながら、調査官のレベルが一般調査とは違います。特官は様々な経験を積んだ調査のスペシャリストである可能性があります。もう一人の若手(こちらもベテランのケースはあります)は調査官付きといって、有望な若手であるケースが多いです。特官部門の調査を受ける法人であれば当然税理士も付いているでしょうし、落ち着いて税理士に対応を任せましょう。
特別部門調査
3つ目は特別調査です。税務署には特別調査部門(署によっては筆頭部門、特別管理部門など部内の名称は異なります)という、主に不正や多額の増差を見込んだ調査案件を扱う部門があります。特別調査は多くの場合、無予告調査です。つまり、事前に連絡がなく、調査当日にいきなり調査にやってきます。特別調査部門なのでトクチョウと呼ばれていますが、トクチョウが来る場合は、不正の手掛かりとなる資料を入手している可能性が高いです。トクチョウの調査官は調査能力が認められた人間が配属されるので、厳しい調査になることは間違いないです。
調査官が三人以上のケース
税務署の調査で調査官が三人以上来るケースは珍しいです。例えば、そのうち一人が国際専門官と名刺に書いてあれば、国際取引を重点的に見るために、通常の二人に加えて調査支援の立場から参加しています。あるいは、情報技術専門官という肩書もあり、主にIT調査を重点的に実施する場合に同行します。
また、多額の不正所得が見込まれる事案を重点的に調査する資料調査課の事案である可能性があります。リョウチョウの事案は色んなパターンがありますが、大人数で一気に攻めることがあります。リョウチョウや査察は、大きな不正、脱税をしている自覚のない方は気にする必要はないでしょう。
調査官の人数はいつどの時点でわかるのか?
税務調査の予告がある調査の場合、国税通則法に基づいた事前通知という手続きああります。これは、調査の日程や調査の目的などを事前に伝えるもので、その予告の際に、調査官の名前と人数が伝えられます。もし税理士が付いている方なら、名前と所属を伝えれば、その調査官のキャリアから推測して実力などを教えてくれるかもしれません。
無予告調査の場合は当然事前に知ることはできません。
無予告調査とは?
タレコミや内偵調査などにより多額の不正が見込まれる事案に無予告で現況調査をする税務調査のことです。事前に調査を予告すると、帳簿書類の破棄や隠ぺいの恐れがある場合に行われる。
まとめ:税務調査の種類と対応方法
税務調査は、調査官の人数や所属部門からその目的や程度を推測することができます。
- 調査官が一人の場合: 一般的な調査で特別な目的はないことが多いです。若手からベテランまで様々な調査官が来る可能性があります。
- 調査官が二人の場合:
a) 一般調査 – 若手調査官の指導担当としてベテラン調査官が同行するケース。
b) 特官部門の調査 – 比較的規模が大きな法人を対象に行われる調査で、調査官のレベルが高い。
c) 特別調査 – 不正や多額の増差を見込んだ調査で、無予告で行われることが多い。 - 調査官が三人以上の場合:
a) 国際取引の調査 – 国際専門官が参加し、国際取引を重点的に調査する。
b) 多額の不正所得の調査 – 資料調査課が重点的に調査し、大人数で一気に攻める場合がある。
調査官が来た際には、冷静に対応し、必要に応じて税理士に相談しましょう。不正や脱税をしていない場合、大きな心配は不要です。