経営セーフティ共済の概要
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は取引先の倒産に備えて連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。取引先が倒産した場合、無担保・無保証人で掛金の最高10倍まで借入でき、掛け金は損金に算入できます。国の機関である中小機構が運営しているので安心感のある制度となっています。本文では、この経営セーフティ共済についての詳細な説明と、注意点について解説していきます。
経営セーフティ共済のメリット
無担保・無保証人で、掛金の10倍まで借入れ可能
共済金の借入れは、無担保・無保証人で受けられます。共済金貸付額の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額となります。(ただし、実質的に有利子なので注意が必要です)
取引先からの売掛金回収が困難な場合に借入れできる
取引先の事業者が倒産し、売掛金などの回収が困難になったときは、その事業者との取引の確認が済み次第、借り入れることができます。
共済金の借入れが受けられる取引先の倒産
- 法的整理
- 取引停止処分
- でんさいネットの取引停止処分
- 私的整理
- 災害による不渡り
- 災害によるでんさいの支払不能
- 特定非常災害による支払不能
共済金の借入れが受けられない取引先の倒産
- 夜逃げ
掛金を損金、または必要経費に算入できる
掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。また確定申告の際、掛金を損金(法人の場合)、または必要経費(個人事業主の場合)に算入できます。
解約手当金が受けとれる
共済契約を解約された場合は、解約手当金を受け取れます。自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります(12か月未満は掛け捨てとなります)。
経営セーフティ共済の注意点
共済金借入は無利子ですが、実質的には有利子です。
借入れ後は、共済金の借入額の10分の1に相当する額が払い込んだ掛金から控除されるからです。500万円借入をすると、50万円の掛金支払いがなかったことになります。多額の売掛金が貸し倒れキャッシュフローが危機的な状況の場合には心強い制度ですが、利子としては多額であるため、共済金の借入はよく考えて進めましょう。金額によっては、一時金貸付の利用(利率0.9%程度)の検討をお勧めします。
その他Q&A
Q:加入資格は?
加入できる方は、次の条件に該当する中小企業者で、引き続き1年以上事業を行っている方です。
- 個人の事業主または会社で下表の「資本金等の額」または「従業員数」のいずれかに該当する方
業種 | 資本金の額又は出資の総額 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
- 企業組合、協業組合
- 事業協同組合、商工組合等で、共同生産、共同販売等の共同事業を行っている組合
Q:掛金は?経費になる?
掛金月額は5,000円から200,000円までの範囲内(5,000円刻み)で自由に選べます。(掛金総額の積立限度額は800万円)
掛金は増額・減額ができます。(減額には事業経営の著しい悪化等の一定の要件が必要です。)
また、掛金は会社等の法人の場合は税法上の損金、個人事業の場合は事業所得の必要経費に算入できます。
※なお、令和6年10月1日以降に共済契約を解約し、再度共済契約を締結(再加入)する場合には、解除の日から同日以降2年を経過する日までの間に支出する掛金については、損金(法人)、必要経費(個人)算入できません。
項目 | 詳細 |
---|---|
掛金月額 | 5,000円から20万円までの範囲(5,000 円単位) |
積立限度額 | 総額800万円まで |
納付方法 | 預金口座振替 |
税法上の取扱い | 法人の場合は損金計上が可能、個人の場合は必要経費に算入可能 |
Q:解約したらどれくらい戻ってくる?
解約手当金の額は、掛金納付月数に応じて、掛金総額に次の表の支給率を乗じて得た額となります。
掛金納付月数:掛金を前納している場合、充当する月が到来していない期間分は掛金納付月数には含まれません。
掛金総額:掛金総額とは、納付した掛金から次の額を差し引いた額となります。
- 共済金貸付額の10分の1に相当する額
- 共済金または一時貸付金の償還を怠ったためにこれらの償還または違約金の納付に充てられた額
掛金を納付した月数 | 任意解約 | みなし解約 | 機構解約 |
---|---|---|---|
1か月~11か月 | 0% | 0% | 0% |
12か月~23か月 | 80% | 85% | 75% |
24か月~29か月 | 85% | 90% | 80% |
30か月~35か月 | 90% | 95% | 85% |
36か月~39か月 | 95% | 100% | 90% |
40か月~ | 100% | 100% | 95% |
Q:返済期間は?
共済金の借入額による返済期間は以下の通りになっています。
借入額 | 返済期間(6か月の据置期間含む) |
---|---|
5,000万円未満 | 5年 |
5,000万円以上6,500万円未満 | 6年 |
6,500万円以上8,000万円以下 | 7年 |
Q:どうやって加入すればいいの?
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の加入手続きは、主に以下2つの窓口で受け付けています。
加入窓口 | 詳細 |
---|---|
委託団体 | 中小機構と業務委託契約を結んでいる団体(商工会、商工会議所、中小企業団体中央会、中小企業の組合、損害保険ジャパン株式会社) |
金融機関窓口 | 融資取引がある金融機関の本支店 |
いずれも利用できない場合には、事業上の預金取引状況(継続1年以上)が確認できる金融機関でも手続きができます。
ただし通常の加入窓口とは必要書類が異なり、手間が増えるためご注意ください。
Q:加入できないケースはある?
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の加入要件を満たしている中小企業や個人事業主、組合であっても、以下に当てはまる場合には加入を認められません。
- 住所や主たる事業の変更を繰り返し、事業が継続的に運営されていると把握できない事業の経理内容が不明所得税や法人税を滞納している既存の借り入れ(共済金および一時金の貸付)を滞納している中小機構からの共済金、一時貸付金、早期償還手当金、解約手当金の返還請求を受けているにもかかわらず、返還がされていない中小機構から共済契約を強制解除された日から1年未満である共済金や一時金の貸付貸付を不正に借り入れようとした日から1年未満であるすでに共済契約者である
事業の実態が不明瞭、税金の滞納がある、その他これまでに何らかのトラブルがある場合は加入ができないケースがあります。通常の事業運営をしていれば問題ありません。
Q:一時金の貸し付けはいくらまで?
さらに中小企業倒産防止共済(経営セーフティー共済)は、一時金の貸付(無担保・無保証人)にも対応しています。一時金の貸付は取引先事業者の倒産時のみならず、事業資金が必要な際にはいつでも利用可能です。
借入限度額は、解約手当金の95%を上限とし、30万円以上、5万円単位です。
■掛金納付月数と借入限度額
掛金納付月数 | 一時貸付金の借入限度額 |
---|---|
1ヵ月~11ヵ月 | 0円 |
12ヵ月~23ヵ月 | 掛金総額 × 75% × 95% |
24ヵ月~29ヵ月 | 掛金総額 × 80%× 95% |
30ヵ月~35ヵ月 | 掛金総額 × 85% × 95% |
36ヵ月~39ヵ月 | 掛金総額 × 90% × 95% |
40ヵ月以上 | 掛金総額 × 95% × 95% |
掛金総額が掛金上限(800万円)の場合 | 800万円 × 100% × 95%(760万円) |
返済期間は1年間、利率は金融情勢によって定められますが、長らく年0.9%からは変動していません。
利息額は借入時に一括前払いのため、実際に手元に入る金額は「借入額から利息を引いた金額(例:借入額100万円×0.9%=991,000円)」です。
参考までに「小規模企業共済」の一般貸付では、利率は年1.5%です(2023年12月現在)。借り入れを想定した共済制度の活用であれば、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は利用しやすいでしょう。
参考
中小機構|経営セーフティ共済とは
中小企業庁|中小企業倒産防止共済制度について
中小企業庁|中小企業倒産防止共済制度の不適切な利用の対応について(令和6年1月)