スタートアップにとって、限られたリソースを最大限に活用することは成長の鍵となります。プロダクト開発や営業活動に注力したい経営者が、日々の経理作業に追われている―。そんな状況は、成長機会の損失に他なりません。
本記事では、税理士事務所へのバックオフィス業務委託によって実現できるメリットと、効果的な導入方法について解説します。
バックオフィスを委託することで得られる3つの効果
経営リソース確保によるコア業務への集中
スタートアップにとって最も重要なのは、限られた時間と人材をコア事業の成長に集中できることです。しかし、日々の経理業務、税務申告、給与計算など、バックオフィス業務は確実に処理しなければなりません。税理士事務所への業務委託により、これらの業務から経営者とチームメンバーを解放することができます。これは単なる業務の外部委託ではなく、企業の成長エンジンを最大限に機能させるための戦略的な判断となります。
経営者は商品開発や営業戦略の立案に、エンジニアはプロダクトの改善に、営業担当者は顧客との関係構築に、それぞれが本来注力すべき業務に時間を使えるようになります。また、経理スタッフの採用や教育にかかるコストを、事業拡大のための投資に振り向けることも可能になります。
専門家による高品質な業務遂行
バックオフィス業務は、企業の成長とともに複雑さを増していきます。取引形態の多様化、売上規模の拡大、従業員数の増加、資金調達のための対応など、その業務範囲は広がり、求められる専門性も高まっていきます。税理士事務所には、これらの業務を正確かつ効率的に処理するノウハウが蓄積されています。
特に重要なのは、業務量の増加に柔軟に対応できる点です。社内で対応する場合、業務量の増加は即座に残業や人員追加の必要性につながりますが、税理士事務所であれば、そのような心配なく、高品質な業務遂行を維持できます。また、税制改正や法令改正にも、常に最新の知識で適切に対応してくれます。
コスト削減とリスクの軽減
バックオフィス要員の雇用コストは、給与や社会保険料だけでなく、採用や間接的にかかるコストも含めると決して小さくありません。バックオフィス業務経験者を雇用するのであれば、給与額面で年間450万円~、社会保険料や間接費も含めると年間600万円を超えることも一般的です。バックオフィスを委託することにより、これらのコストを大幅に削減することができます。
また、バックオフィス要員の突然の退職は業務の停滞を招く可能性がありますが、委託であれば安定的な業務運営が可能です。さらに、業務量の増減にも柔軟に対応できるため、人員過不足のリスクも軽減できます。
このように、税理士事務所への業務委託は、単なる業務の外部化ではなく、スタートアップの成長を加速させるための戦略的な選択となります。
具体的にどんなことを委託できるの?
経理業務のアウトソーシング
多くの経営者は、税理士事務所に依頼できる業務を「税務申告」や「記帳代行」程度と考えがちです。しかし実際には、請求書の発行や債権管理、支払管理など、企業の資金繰りに直結する経理業務全般を委託することが可能です。
日々発生する経理業務は、成長するスタートアップにとって大きな負担となります。請求書の発行から入金管理、取引先への支払い管理、経費精算の処理まで、これらの業務は着実な処理が必要不可欠です。クラウド会計ソフトとの連携により、これらの業務はほぼ自動化され、経営者は資金繰りの状況をリアルタイムでモニタリングできます。
特に売掛金の管理は重要です。請求書の発行漏れや、入金の遅延は企業の資金繰りに直接影響を与えます。税理士事務所に委託することで、請求書の発行から入金管理までを一元的に管理し、滞留債権の発生を未然に防ぐことができます。同様に、仕入先への支払い管理も適切に行うことで、取引先との良好な関係を維持できます。
経費精算についても、領収書の電子化とクラウド会計ソフトの活用により、承認からデータ入力、支払いまでの一連の流れを効率化できます。経営者は承認作業に専念し、その後の処理は税理士事務所が担当することで、スピーディーな精算が可能となります。
経営者が具体的にどの程度経理業務に時間を取られているかというと、決済事務だけでも平均で18.6時間、中央値で8時間が費やされているそうです(出所:帝国データバンク「決済事務の事務量等に関する実態調査」)。取引量の少ないスタートアップはこれより決済事務だけだとこれより短い時間だとは思いますが、経費精算や売掛管理など合計したら月に10時間以上はかかっているのでないでしょうか。増え続けるこのような業務を早めにアウトソースしてコア業務のリソースを確保すべきなのです。
さらに、これらの日常的な経理業務を正確に行うことで、月次決算や年度決算の作成もスムーズになります。投資家への報告や金融機関との折衝に必要な財務資料も、タイムリーに準備することができます。
給与計算業務のアウトソーシング
バックオフィス業務のもう一つの重要な要素が給与計算です。スタートアップが成長期に入ると、従業員数が増加し、給与計算の負担が急激に増加します。この領域も税理士事務所に委託することで、大幅な業務効率化が実現できます。
具体的には、毎月の給与計算、賞与計算、年末調整など、定型的な業務を一括して委託できます。給与計算ソフトとの連携により、勤怠データの取り込みから給与明細の作成、振込データの作成まで、一気通貫で処理することが可能です。
経営管理のクオリティアップ
さらに、税理士事務所は単なる事務作業の代行だけでなく、経営管理体制の高度化をサポートする機能も果たします。予算管理の導入、部門別採算の分析、KPIの設定と管理など、経営の意思決定に必要な管理体制の構築を支援してくれます。
また、事業計画の策定支援や、資金繰り計画の立案など、企業の成長戦略に関わる重要な局面でも、専門的な知見を活かしたサポートを期待することができます。
このように、税理士事務所への業務委託は、単純な事務作業の外部化にとどまらず、企業経営の質を高めるための包括的なソリューションとして機能します。スタートアップの成長ステージに応じて、必要な支援を柔軟に受けることができる点が、大きな特徴と言えるでしょう。
スタートアップがバックオフィスを委託した方がいい理由とは?
スタートアップの成長ステージにおいて、バックオフィス業務は売上や取引の増加に比例して急激に増大します。取引先が増えれば請求書処理も増え、従業員が増えれば給与計算や社会保険手続きも複雑になります。さらに資金調達のタイミングでは、詳細な財務資料の作成も求められます。
しかし、この段階でバックオフィス専任の社員を雇用することは、固定費の増大につながり、事業成長の足かせとなりかねません。一度バックオフィス社員を雇用してしまうと、退職のリスクも増大します。属人化した業務の引継ぎ時は最もミスが発生しやすい場面になります。多くのスタートアップは、この課題に直面しています。
つまり、スケーラブルなスタートアップにとって、税理士事務所にバックオフィスを委託することは非常に理にかなっており、業務のクオリティ面、コスト面、リスクマネジメントの観点からも非常にオススメです。
税理士事務所活用のメリット
成長に合わせた柔軟なスケーリング
取引量や従業員数が増えても、税理士事務所側で柔軟に対応が可能です。たとえば、取引先が50社から200社に増加した場合でも、社内で新たに人員を採用する必要はありません。月額の業務委託費用は段階的な調整で済むため、経営の予測可能性が高まります。
専門性の確保と業務品質の維持
事業規模が拡大すると、会計・税務の処理も複雑化します。取引形態が多様化し、資金調達時には詳細な財務デューデリジェンスが必要になることもあります。税理士事務所を活用することで、このような専門性の高い業務にも、追加の人材採用なしで対応できます。時には税務調査への対応も必要になりますが、専門家のサポートがあれば安心です。
コア業務への経営資源の集中
バックオフィス業務を税理士事務所に委託することで、限られた経営資源を成長のための重要業務に集中できます。プロダクト開発や営業活動、資金調達、そして組織づくりなど、スタートアップにとって本質的な業務により多くの時間を割くことが可能になります。
成長ステージに応じた活用方法
創業間もない段階では、基本的な記帳代行と税務申告、資金繰り管理の基礎固めから始めるのが一般的です。事業が軌道に乗り始めると、月次決算の早期化や管理会計の導入、給与計算の外部化などが重要になってきます。特に資金調達を控えている場合は、財務面でのサポートが心強い味方となります。
さらに成長が進むと、より本格的な経営管理体制の構築が必要になります。予実管理やKPI管理の導入など、経営の高度化に向けたサポートも税理士事務所に期待できる部分です。
効果的な活用のためのポイント
成長プランの共有
自社の成長計画を税理士事務所と共有することは非常に重要です。資金調達や大型の事業提携、新規事業の立ち上げ、海外展開など、大きな変化が予想される際は、早めの相談が望ましいでしょう。これにより、将来の業務量増加に備えた体制を事前に準備できます。
効率的な業務フローの構築
クラウドツールを活用した効率的な業務フローの構築も重要なポイントです。請求書のデジタル化や経費精算の電子化、給与計算システムの導入など、テクノロジーを活用することで、税理士事務所とのやり取りもスムーズになります。
コミュニケーションの重要性
月次での業績レビューを通じて、業務量の変化や経営課題を共有し、必要に応じて業務フローの改善や追加サポートの検討を行います。定期的なコミュニケーションにより、より効果的な連携が実現できます。
まとめ
スタートアップにとって、急成長期のバックオフィス業務への対応は避けて通れない課題です。税理士事務所の活用は、固定費を抑えながら専門性の高い業務処理を実現し、経営資源をコア業務に集中させることを可能にします。自社の成長ステージに合わせて、適切なタイミングで業務委託を検討してみてはいかがでしょうか。
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