税金にまつわる話題は、一般的に複雑で難解だと思われがちです。しかし、その複雑さの中には、私たちの日常生活やビジネス活動に直接影響を及ぼす重要な要素が数多く含まれています。特に、「脱税」という言葉を聞くと、多くの人が直感的に犯罪行為と結びつけてしまうかもしれません。しかし、税務に関する誤解や疑問は、単なる知識の欠如によるものも多く、適切な理解があれば避けられるトラブルも少なくありません。
今回の記事では、脱税の基本的な概念を中心に、関連する他の税務用語について解説していきます。脱税がどのようにして認定されるのか、また、一般的な税務調査とどのように異なるのかを見ていきましょう。また、所得漏れや租税回避行為についても触れ、それぞれの違いや税法上の位置づけについても明らかにしていきます。
税務の世界は一見取っつきにくいかもしれませんが、基本的な知識を身につけることで、私たち自身のビジネスや生活に役立つ情報が得られるはずです。この記事が、その一助となれば幸いです。それでは、具体的な内容に進んでいきましょう。
脱税とは何か
脱税とは不正による所得隠しであり、検察に立件され逮捕される可能性がある行為のことです。逮捕されるということは、刑務所に収監される可能性もあるということです。完全なる犯罪行為ですね。
ここで間違えやすいのは、税金の計算をごまかしたら脱税なのか、ということです。これは必ずしもそういうことではありません。
まず、脱税と認定されるには、いくつかのステップがあります。
脱税行為を摘発するのは、一般的な税務署の税務職員ではありません。国税局査察部の査察官であり、通称マルサや6階と呼ばれる職員たちによる強制捜査がスタートです。マルサはどういうところに入ると、不正による所得隠しが1億円以上見込まれる個人や企業を調査します。
その後、強制調査により認定された事実に基づいて、国税局査察部は検察に事案を引き渡します。検察はこの事案を精査して、対象を罪に問うために起訴して、刑事裁判を起こします。その後、裁判所により罪が確定するというわけです。
所得1億円以上の不正というのはものすごい規模ですよね。脱税と言うのはそれほど重い行為ということです。
脱税までいかないまでも、不正による所得隠しも大きなペナルティを与えられます。これは、必ずしもマルサの調査ということではなく、一般的な税務調査でも発見されるものであり、重加算税が課され、青色申告取消の可能性もあります。報道では、所得漏れや申告漏れの一部に不正所得が入っているというケースもあります。
所得漏れとは何か
所得漏れとは、確定申告で申告した所得金額が実態より少なく、それを税務調査で指摘されることを言います。ほとんどの修正申告のケースはこれに当たるでしょう。申告漏れとも表記されます。
不正による所得隠しとは違い、重加算税よりも税率の軽い過少申告加算税が課されます。所得漏れは単純な計算ミスやうっかりミス、税法の認識相違によるミスも含まれます。
不正と所得漏れの違い
ここで不正とは何かについて解説しておきましょう。所得漏れが不正なのかそうでないのかによって、重加算税の賦課なのか、そうでないのかが分かれるので重要です。
不正とは、仮想隠蔽行為です。では、仮想隠蔽行為とは何か。これは国税庁の公的資料である事務運営指針に具体的な事例が示されています。
①二重帳簿を作成していること
②決算に関係のある書類を破棄または隠匿していること
③帳簿書類の改ざん、虚偽記載、相手方と示し合わせて虚偽の書類の作成、意図的な集計による仮装経理
④売上、収入の除外
⑤虚偽申請による書類交付での損金算入、税額控除
⑥簿外資産に係る収入の帳簿不記載
細かいところではほかにもありますが、大体上に見てきたようなことが仮想隠蔽行為に当たります。これらの行為が認定されると、不正として重加算税が賦課されるわけです。
租税回避行為とは何か
租税回避行為とは、税法で明確に禁止されてはいないものの、その法の意図とは異なった解釈で租税を回避する行為のことです。言ってみれば、法の穴を付いて課税を逃れる行為です。したがって、合法なのです。ちょっとイメージしづらいと思いますので、例をあげます。
「遠足にもっていくおやつは300円まで」
と先生から言われたとします。ここで、Aくんは300円分のお菓子とは別にバナナを持ってきました。A君は「バナナはおやつではなくデザートです」と言いました。A君は間違っているでしょうか?ここで、先生はおやつがバナナを含むデザート全般も指していたとしたら、A君は租税回避行為をしているということになります。しかし、A君に非があるのでしょうか。本来、先生は、おやつが何なのか、について明確に定義すべきでしょう。さらに、300円というのは、購入価格なのか、時価なのか、売却価格なのか、金額についても明確に定義すべきでしょう。例えば、お隣さんからもらったおやつは買っていないから0円です、とB君が言うかもしれません。つまり、ルールを制定した先生が甘かったということです。
これらの租税回避行為は、法改正によってつぶされることが多いのですが、快晴までの数年間はこのように租税を回避することが合法的に行われています。個人的には立法のミスなので、租税回避行為だけを咎めるつもりはありません。企業の経済活動としては合理的な行為だと考えます。
参考法令等
国税通則法第68条
法人税法159条
所得税法238条