「記帳は丸投げでいいですよ」と言われても、実際に何を、どの形で、いつ渡せばいいのかは、契約してみるまで具体的にわかりません。渡すものが足りなければ記帳は止まり、渡しすぎれば整理する手間が増えます。

ここでは、freee会計を使う前提で、渡すもの・渡し方・渡すタイミングを実務の順に整理します。当事務所が顧問先40社の記帳を回すなかで、実際に決めている運用です。

結論:渡すものは5つだけです

毎月渡すものは、突き詰めると次の5つです。これ以外は基本的に要りません。

渡すもの渡し方頻度
1. 銀行・カードの明細freeeに口座を連携(自動)初回設定のみ
2. 受け取った請求書専用アドレスへ転送、または取引先から直送届いたつど
3. 領収書・レシートスマホで撮影してアップロード使ったつど
4. 発行した請求書freee請求書で発行、または控えを共有発行したつど
5. 給与の資料freee人事労務、または勤怠データ月1回

紙を封筒に詰めて郵送する必要はありません。むしろ紙のまま渡すと、data化の手間が料金に乗ります。順に見ていきます。

1. 銀行・カードの連携が、いちばん効きます

最初にやるべきは、銀行口座とクレジットカードをfreeeに連携することです。ここが済むと、入出金の明細が毎日自動で取り込まれ、記帳の材料の大半が揃います。

逆に、連携していない口座があると、通帳のコピーやCSVを毎月渡す作業が発生します。同じ取引量でも工数が数倍変わるのはここです。見積もりが高いと感じたら、まず連携できていない口座がないか確認してください。

連携で気をつけること

  • 事業用と個人用を分ける/個人の口座が混ざると、仕訳のたびに「これは事業か」の確認が発生します。事業用の口座を1つ決めて、そこに集約してください
  • 使っていない口座も連携する/年に数回しか動かない口座ほど、記帳漏れの温床になります
  • カードは法人カードに寄せる/代表者個人のカードで払うと、立替精算の処理が毎月発生します

2. 受け取った請求書は、転送するだけ

取引先から届く請求書は、請求書受領システムの専用メールアドレスに転送するのがいちばん軽い渡し方です。当事務所ではバクラク(LayerX社)を使っています。

さらに進めると、取引先に「今後はこのアドレスへ送ってください」と案内して直送してもらう形にできます。こうすると請求書が会社の手元を経由しなくなり、転送の作業すら不要になります。切り替えは一度きりで、以降ずっと効きます。

紙で届く請求書は、スキャンかスマホ撮影で同じアドレスへ送れば同じ扱いになります。

3. 領収書は「撮って終わり」にする

領収書やレシートは、受け取ったその場でスマホ撮影してアップロードしてください。freeeのアプリでも、経費精算システムでも構いません。

月末にまとめて処理しようとすると、失くす・順番がわからなくなる・何の支出か思い出せない、の3つが起きます。「思い出せない」が最も厄介です。金額と店名だけでは、会議費なのか交際費なのか、判断がつきません。

撮るときに一緒に残してほしいこと

飲食のレシートには、誰と行ったかをメモしてください。参加者が社外の人かどうかで、交際費か会議費かが変わります。1人あたりの金額で判定が分かれる場面もあるため、人数も残しておくと確実です。

紙のレシートに直接書き込んでから撮る、freeeのメモ欄に打つ、どちらでも構いません。後から聞かれて思い出す手間が、いちばん高くつきます。

4. 発行した請求書は、控えを渡す

売上の記帳には、いつ・誰に・いくら請求したかが要ります。freee請求書で発行していれば、そのままデータが繋がるので何も渡す必要はありません。

Excelや他のサービスで発行している場合は、発行した請求書のPDFを共有フォルダに入れるだけで足ります。入金の消込にも使うので、請求書番号がわかる形で残してください。

5. 給与は、締めたデータをそのまま

freee人事労務を使っていれば、給与計算の結果が会計に自動で連携されます。別のソフトを使っている場合は、給与明細か賃金台帳を月1回渡してください。

給与計算そのものを任せる場合は、勤怠データ(出勤日数・残業時間)と、その月の変動(入退社・住所変更・扶養の変更)を伝えるだけです。

渡すタイミング

「月末にまとめて」ではなく、発生したつど渡すのがいちばん楽で、いちばん早く数字が出ます。月次の締めスケジュールは、おおむね次のようになります。

時期会社側事務所側
随時領収書の撮影、請求書の転送届いたものから処理
月初〜5日給与データの確定
5日〜10日不明点への回答内容不明の取引を照会
10日〜15日月次試算表の作成・共有

会社側の作業が発生するのは「不明点への回答」だけです。ここが滞ると試算表が出ないので、この1つだけは期日を決めておくことをおすすめします。

freeeの権限は、どこまで渡すか

記帳を任せるには、freeeのメンバーとして事務所を招待することになります。ただし管理者権限まで渡す必要はありません。

管理者権限があると、口座連携の設定変更や、他のメンバーの追加・削除までできます。記帳と決算に必要なのはそこまでの権限ではありません。どの権限で作業するのかを、契約時に決めておいてください。

会計データは貴社名義のfreeeアカウントに残ります。事務所を変えることになっても、データがそのまま残るのがクラウド会計の利点です。

渡さなくていいもの

逆に、渡さなくてよいものもあります。ここを整理しておくと、月末の作業がかなり減ります。

  • 通帳の原本・コピー/口座を連携していれば不要です
  • 手書きの出納帳/現金取引がある場合を除き、作る必要はありません
  • クレジットカードの利用明細(紙)/カードを連携していれば不要です
  • すでにfreeeに入っている取引の証憑を、別途メールで送ること/二重管理になります

よくある詰まり方

「内容不明」の出金が毎月たまる

明細に「振込 カ)〇〇」とだけ出ていて、何の支払かわからない取引です。これが月に数件あるだけで、試算表が締まらなくなります。領収書や請求書が紐づいていれば自動で判明するので、渡し忘れがないかを先に疑ってください。

代表者の個人カードでの支払が混ざる

法人の経費を個人カードで払うと、立替精算の処理が毎月発生します。金額が小さくても件数が多いと手間になるので、法人カードに寄せるだけで月次が軽くなります。

同じ領収書を2回アップロードしてしまう

その場で撮ったものと、月末にまとめて撮ったものが重複するケースです。二重計上の原因になります。撮ったレシートに印をつける、撮ったら捨てる、といった運用を決めておくと防げます。

よくある質問

過去の分がたまっています。まとめて渡せますか?

渡せます。ただし遡る月数に応じて別途費用がかかることが一般的です。何か月分あるかを最初に伝えてください。数か月分と1年分では、必要な期間も費用も変わります。

領収書の原本は、こちらで保管が必要ですか?

電子帳簿保存法の要件を満たす形でスキャン保存していれば、原本の保管は不要になります。要件を満たしているかは、freeeの設定と運用によって変わるため、契約時にご確認ください。

現金商売で、レシートが1日に何十枚も出ます

日々の売上は1日1件の集計仕訳にまとめるのが一般的です。レジの日計表を渡していただければ、1枚ずつ処理する必要はありません。仕入や経費のレシートは通常どおり撮影してください。

渡すのを忘れたらどうなりますか?

その取引が帳簿に載らないか、内容不明のまま残ります。決算前にまとめて確認することになるので、期中に渡しておくほうが結果的に手間が少なくて済みます。

まとめ

  • 渡すものは5つだけ(口座連携・受取請求書・領収書・発行請求書・給与)
  • 銀行とカードの連携がいちばん効く。ここが済めば材料の大半が揃う
  • 請求書は転送するだけ。さらに進めれば取引先から直送にできる
  • 領収書はその場で撮る。飲食は誰と行ったかをメモする
  • 会社側に残る作業は「不明点への回答」だけにできる

どこまで任せられるのか、費用はいくらかは税理士に経理を丸投げすると、いくらで、どこまで任せられるのか、料金の相場は記帳代行・経理代行の料金相場にまとめています。

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