「freee 記帳代行」で検索すると、まったく性質の違うものが3種類まざって出てきます。freee公式の「記帳代行プラン」、freeeに対応した記帳代行会社、そしてfreeeを使う税理士事務所です。
いちばん誤解されやすいのが最初のひとつです。freee公式の「記帳代行プラン」は、会社が自分で申し込めるサービスではありません。ここを取り違えたまま比較すると、話がかみ合いません。
freeeの「記帳代行プラン」は、会計事務所向けのツールです
freeeが提供している「記帳代行プラン」は、freee認定アドバイザー制度に加入した会計事務所だけが契約できるプランです。名前から「freeeが記帳を代行してくれるサービス」と読めてしまいますが、そうではありません。
中身は、会計事務所が顧問先の記帳を効率よく片づけるための機能セットです。銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取得して仕訳を作り、ルールを設定すれば自動で仕訳が確定し、紙の資料はスキャンすればAI-OCRが読み取る。freeeの説明では、記帳業務の7〜8割を自動化できるとされています。
費用を払うのは会計事務所側で、顧問先の費用負担は0円です。事務所は1事業所あたり月額1,000円(税抜)程度を負担して使います。
つまり、会社側からすると「freeeの記帳代行プランを使っている会計事務所に頼む」のが正しい理解です。プランそのものを買うことはできません。
では、誰に頼むのか
実際の選択肢は2つに絞られます。記帳代行会社に頼むか、税理士事務所に頼むかです。
記帳代行会社に頼む場合
記帳代行を専門にしている会社があります。税理士資格を前提としないぶん、料金は安く設定されています。相場は1仕訳あたり50〜100円、月100仕訳までで月5,000〜10,000円、月100〜250仕訳で月6,000〜20,000円程度です。時間制で1時間2,000〜3,000円という設定もあります。
記帳という作業そのものに資格は要りません。ですから、記帳代行会社が帳簿を作ること自体は問題ありません。
税理士事務所に頼む場合
顧問料に記帳代行が含まれる場合と、別料金になっている場合があります。記帳代行部分だけを比べれば、記帳代行会社より高くなります。
ただし、比べているものが違います。次に書くとおり、その先の工程が事務所内でつながるかどうかが変わります。
決定的な違いは「申告まで一本で通るか」
税務書類の作成・税務代理・税務相談は、税理士でなければ行えません(税理士法)。記帳代行会社は帳簿を作るところまでで、決算書と申告書の作成、税務署への提出、税務相談には関与できません。
そうすると、記帳代行会社に頼んだ会社は決算期に別途、税理士を探すことになります。ここで問題が起きます。
- 期中の判断が入っていない帳簿を、決算で作り直すことになる/記帳代行会社は税務の判断をしないため、資産計上すべき支出が経費に入っていたり、消費税の税区分が実態と合っていなかったりします。決算で税理士が全部見直すと、記帳を安く上げたぶんが決算料に乗ってきます
- 期中に節税の手が打てない/利益が出ていることに決算間際まで気づかず、打てる手が残っていない状態で決算を迎えます
- 責任の所在が分かれる/数字が合わないときに、記帳代行会社と税理士のどちらに聞けばいいのかがはっきりしません
記帳代行会社と税理士を別々に使う形は、月々のコストは下がっても、年間で見ると差が縮むことが多いのはこのためです。
もうひとつの落とし穴:記帳が終わっても、経理は終わりません
記帳代行を頼んだ会社が「思ったより楽にならなかった」と言うことがあります。理由は単純で、記帳は経理の一部でしかないからです。
記帳を外に出しても、次の作業は会社に残ります。
- 届いた請求書を集めて、内容を確認し、支払期日を管理する(買掛管理)
- 支払期日に合わせて振込データを作る
- 売上請求の入金を確認し、消し込む(売掛管理)
- 給与を計算し、明細を配る
- 従業員の立替経費をチェックして精算する
これらは記帳代行の範囲外です。「記帳は外に出したのに、月末はやっぱり忙しい」という状態になるのは、ここが残っているからです。この範囲まで引き受けるのが経理代行(当事務所でいう社外経理部)で、記帳代行とは別のサービスです。違いは税理士に経理を丸投げすると、いくらで、どこまで任せられるのかに詳しく書いています。
3つを並べて比べる
| freee「記帳代行プラン」 | 記帳代行会社 | 税理士事務所 | |
|---|---|---|---|
| 会社が直接契約できるか | できない (会計事務所向け) | できる | できる |
| 記帳 | ツールとして自動化 | ○ | ○ |
| 決算書・申告書 | — | × | ○ |
| 税務相談 | — | × | ○ |
| 買掛・振込・売掛・給与・経費精算 | — | × (経理代行会社なら○) | 事務所による |
| 費用の目安 | 顧問先の負担なし | 1仕訳50〜100円 月5,000円〜 | 顧問料に含むか別料金 |
頼む前に確認しておくこと
どこに頼むにせよ、契約前に詰めておかないと後で揉めるところがあります。freeeを使っている会社の場合、確認すべきは次の4点です。
1. freeeにどの権限で入るのか
freeeのメンバー権限には管理者・一般・取引閲覧などの区分があります。管理者権限を渡すと、口座連携の設定変更や他のメンバーの追加・削除までできてしまいます。記帳だけを頼むのであれば、そこまでの権限は要りません。どの権限で作業するのかを最初に決めておいてください。
2. 「自動で経理」の未処理明細を触るのは誰か
freeeの「自動で経理」に溜まる明細を、代行先が処理するのか、会社側が処理するのか。ここが曖昧なまま始まると、どちらも触らずに何百件も溜まるか、逆に両方が触って二重に計上されます。実際によくある事故です。
3. 税区分の判断を誰がするのか
インボイス登録の有無による仕入税額控除の扱い、軽減税率の判定、経過措置の適用。これらは仕訳を入力する時点で判断が要るものです。記帳代行会社が「請求書のとおりに入れるだけ」の運用だと、決算で全部見直すことになります。誰がどこまで判断するのかを、契約前に確認してください。
4. 決算のとき、どう引き継ぐのか
記帳代行会社と税理士が別々の場合、決算期に帳簿を引き渡すことになります。そのときに何を渡すのか、渡した後の修正は誰がするのかを決めておかないと、決算が止まります。証憑がfreeeに紐づいていない、摘要が空欄で内容がわからない、といった状態だと、税理士側の作業量がふくらみます。
選び方の目安
身も蓋もない言い方をすると、すでに顧問税理士がいて、記帳だけが追いついていないのであれば、まず顧問税理士に記帳代行を頼めるか聞くのが早いです。別の会社を挟むより、判断が一本になります。
顧問税理士がいない、または記帳以外も回っていないのであれば、記帳代行会社ではなく、記帳から申告まで通して見られるところを探したほうが結果的に安く済みます。
経理担当がいない、または辞めてしまったのであれば、記帳代行では足りません。買掛・振込・売掛・給与・経費精算まで引き受ける経理代行が要ります。この局面での動き方は経理担当者が辞めたとき、まず何をすべきかにまとめています。
当事務所の場合
当事務所はfreee専門で、記帳代行だけのご契約は承っていません。税務顧問とセットで、経理部の機能をまるごとお引き受けする形にしています。月次から決算・申告まで同じ担当が通して見ることで品質を担保するためです。
従業員7名・年商5,000万円の会社で、経理代行・税務顧問・決算申告を合わせて年179万円(月あたり約149,000円)が目安です。この金額に、記帳・買掛管理・振込データ作成・売掛管理・給与計算・経費精算のすべてが含まれます。
記帳代行だけの料金と比べれば高く見えますが、比べる対象が違います。詳しくは社外経理部のご案内をご覧ください。
よくある質問
freeeの記帳代行プランを使っている事務所かどうかは、どう確認すればいいですか?
直接お尋ねいただくのが確実です。ただし、そのプランを使っているかどうかより、記帳がいつ締まるか、月次の数字がいつ見られるかを聞いたほうが実態がわかります。ツールを入れていても運用が追いついていなければ、数字は遅れます。
記帳代行会社に頼んでいますが、申告だけ税理士に頼めますか?
可能ですが、決算のときに帳簿の見直しが発生することが多く、決算料はその分高くなる傾向があります。年間の総額で比べてみてください。
いまfreeeを使っていません。それでも頼めますか?
当事務所はfreee会計の利用を前提に設計しているため、他の会計ソフトのままではお受けしていません。弥生会計・マネーフォワード等をお使いの場合は、freeeへの移行支援からお手伝いします。
記帳代行だけ、単発でお願いできますか?
承っておりません。過去分がたまっている場合の遡り記帳は、顧問契約とあわせてご相談ください。
まとめ
- freeeの「記帳代行プラン」は会計事務所向けのツールで、会社が直接申し込むことはできない
- 実際の選択肢は記帳代行会社か、税理士事務所かの2つ
- 記帳そのものに資格は要らないが、決算書・申告書の作成と税務相談は税理士でなければ行えない
- 記帳を外に出しても、買掛・振込・売掛・給与・経費精算は会社に残る
- 月額だけでなく、決算料まで含めた年間の総額で比べる
現状の経理体制と処理の流れをうかがい、貴社の課題をどのように解決できるのかをお話しします。うかがった内容をもとに、年間の総額をお見積りしてご提出します。無理な営業はしません。
